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「驟雨に関する考察とその変奏」
2015年
アクリル、綿布
181.8x227.2cm(F150)


松浦 寿夫展
MATSUURA Hisao
2016.01.12(火)―01.30(土)
※土曜5時まで、日・月休廊

土地の名

 「土地の名」という語は、マルセル・プルーストの『失われた時を求め
て』の章題のひとつを否応なく喚起せずにはおかない。そして、今年の夏
は予期せぬかたちで、この何でもない語の周囲で仕事を展開するという僥
倖をえることになった。岩崎力先生のお仕事を顕彰するシンポジウムのポ
スター制作を厚かましくかって出たものも、どこから始めるのかという問
いに直面せざるをえなかった。それは、単に自分の作品を制作するという
次元とは別の配慮を幾重にも要請するものであったからであり、大きな困
惑を抱え込むことにもなった。あえて大げさな表現を採用すれば、外部性
の担保なしには仕事を開始できないというこの状態は、それ自体、自分の
仕事に再考を迫るものでもあった。
 そこで想起したのは、岩崎先生のお書きになられた文章のなかで、おそ
らく一番最初に読んだもの、『ふらんす』という雑誌に掲載された、コン
カルノーというブルターニュ地方の海岸沿いの街、コンカルノーに関する
ごく短い文章であった。20歳前後に読んだこの文章の詳細はほとんど覚え
ていないのだが、視覚的な記憶のなかでは、漁船かなにかのカットが付さ
れていたようにも思う。そしてそのごく近くまでは赴いたことがあるとは
いえ、この未見の土地の名から制作を開始することになった。結局、20点
を超える原画をコンカルノー連作、Suite concarnoiseとして制作すること
になった。
 固有名詞が意味作用を欠いた指示作用に集約されるという哲学的な議論
の脇で、土地の名という固有名詞が、ちょうどプルーストが実践してみせ
たように、さまざまな想像的な像が折り込まれた多層性を備えていること
に注目せざるをえなかった。そして、これらの断片的な像が、連辞的な関
係を欠いたまま、あるいは、端的にシンタックスとは別の形式のもとに多
層性を開示する状態に、絵画のひとつの状態を見出しえるように思えてな
らなかった。

2015.12.12 松浦 寿夫

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